肩の脱臼は、再脱臼しやすいと言われているため、再発予防がとても大事です。
予防には、脱臼する原因を知ることと、筋トレが必要ですが、どこをどう鍛えればいいのか、なかなか分かりづらいと思います。
今回は、脱臼の原因と、病院での処置後、再発予防のための、肩関節を取り巻く筋肉のバランスの良い鍛え方をしっかり解説していきます!
目次
肩関節脱臼後の流れ
肩が脱臼し、病院や接骨院で元に戻してもらった後、装具や三角巾などで、3週間ほど固定し、安静にすることで、一般的には「治療終了」ということになります。
状況によって、手術が行われますが、いずれにしても、「再び脱臼してしまう(再脱臼)のを防ぐ」ことと、「筋力や可動域を改善させる」ためにリハビリをしっかりやって肩関節の機能を回復させる必要があります。
私の接骨院でも、整形外科での治療が終わって、その後、どのように過ごせばいいのかわからなくて不安、という声も多いので、これから、そのリハビリ方法について解説していきます。
なぜリハビリが必要か?
肩関節は一度脱臼してしまうと、肩関節を安定させるための軟骨や靭帯を損傷してしまうため、再び脱臼するリスクが生じます。
これは程度により、手術が必要になる事もありますが(関節の軟骨や靭帯を補強する手術)、一般的には肩関節をとりまく筋力をバランスよく鍛えることで、再脱臼を防ぐためにリハビリを開始します。
リハビリは、回復の程度や目的(スポーツに復帰したい)に応じて、段階的に進めていく必要があるのですが、何から始めてどうすればゴールなのか?分からないことも多いと思うので、一から解説していきます!
リハビリは何から始める?
今後、肩関節の機能を回復し、再び脱臼してしまうことを防ぐために、やるべきことが3つあります。
筋トレ(インナーマッスルを中心にトレーニング)
肩関節には、肩関節を動かす筋肉(アウターマッスル)と肩関節が脱臼しないように安定させるための筋肉(インナーマッスル)が存在します。
どちらの筋肉もバランスよく鍛える必要があるのですが、再脱臼を防ぐためには、まず、ローテーターカフと呼ばれるインナーマッスルマッスル鍛える事が最優先です。
ローテーターカフ(回旋筋腱板)とは、「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」と呼ばれる筋肉で三角筋などの内側にあり、肩関節を取り囲むようについていて、関節を安定させる役割があります。
リハビリトレーニングはこのローテーターカフの4つの筋力を鍛える事が大切ですが、大胸筋や上腕三頭筋などの大きな筋肉の腱も肩関節の前方を通って肩関節の安定に作用します。
肩関節と肩甲骨の柔軟性をつける
予防する上で、インナーマッスルを鍛える事も大切ですが、肩関節と肩甲骨の柔軟性をつける事も大事です。
脱臼した際には、靭帯や腱、関節包などの組織を損傷してしまうため、脱臼後の固定期間中にこれらの組織が硬く治ってしまい、また肩を動かさない期間が出来ることで、肩関節や肩甲骨の柔軟性が失われてしまします。
肩関節と肩甲骨は連動して動くので、例えば、肩を動かした際に肩甲骨の動きが悪いと、その分肩関節に負担が掛かる事になります。
なので、筋トレと並行して可動訓練もしっかりやっていきましょう!
外れやすい肩の動きを控える
肩の関節は、腕が後ろに引かれた時、特に、腕が水平に上がっていて肘が90度曲がった状態で後ろに引かれた時に外れやすいと言われています。
つまり、この様な動きを日常でなるべく控えることが大切です。
具体的には、車の後部座席のものをとろうとするときや、寝ていて枕元にあるスマホを取ろうとするときなどがこの動きになります。
またスポーツにおいては、ヘッドスライディングやバスケのシュートブロックなども原因になります。
この外れやすい動きを常にイメージして、これらの動きをなるべく控えましょう。
ちなみに、私は、キックボクサーのトレーナーをしていますが、試合の現場でたびたび肩の脱臼を目にします。
特にフック系のパンチを打った際に脱臼してしまう事が多いようです。
トレーニング開始!
トレーニングは、大きく3つのやり方をご紹介します。どれも再脱臼を防止する上で大切なトレーニングなので、バランスよく行いましょう。
①動きを伴ったサーキットトレーニング
まず、肩関節を安定化させる役割があるインナーマッスル、ローテーターカフ(「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」)のトレーニングを中心に始めていきます。
主に肩関節の回旋と外転という動きに関連する筋肉なので、この動きでトレーニングしていくのですが、これらの筋肉は一つ一つが小さい筋肉で大きい負荷をかけると痛めやすい、という特徴があるので、最初は500mlのペットボトルや1kgのダンベルから始めて、痛みの具合を確認しながら、少しずつ負荷を上げていきましょう。
一般的には、ゴムチューブで鍛える方法が紹介されていますが、今回は、最も手軽に、習慣化して継続できるように、軽めのダンベルを使っサーキットトレーニングをご紹介します。
動画はこちらから ↓↓↓ (四十肩用となっていますが、肩の脱臼予防にも最適なトレーニングです!)
②関節を安定化させる等尺性トレーニング(スタビライゼーショントレーニング)
一つ目のトレーニングは動きを伴ったトレーニング方法ですが、次に関節を安定化させるための「等尺性トレーニング(スタビライザーライゼーショントレーニング)」というトレーニング方法をご紹介します。
ある姿勢を維持したり、動きを伴わずに体を支えるような形でのトレーニングです。
関節を大きく動かす筋肉ではなく、関節を固定して安定化させる筋肉の働きを強化するトレーニング方法ですが、脱臼を予防する「ローテーターカフ」と呼ばれる筋肉は、この「安定化(スタビライザー)」として機能する筋肉なので、より予防効果の高いトレーニングと言えます。
動画はこちらから ▼▼▼
肩関節の前側を通る大きな筋肉
肩の脱臼はほとんどの場合、肩の前側に外れてしまう「前方脱臼」と呼ばれるものですが、肩関節の前側には大胸筋や上腕二頭筋といった大きな筋肉の腱が通っているので、これらの筋肉も合わせてトレーニングしましょう。
ちなみに、千代の富士は、腕立て伏せを毎日500回(最低)やって大胸筋をきたえ、脱臼ぐせを克服し、横綱になったそうです。
動画はこちらから ▼▼▼
トレーニングの負荷は、「傷んでいる組織の回復を妨げない範囲で、少しずつ段階的に行う」という原則を意識して、段階的に少しずつ負荷を上げていきましょう!
可動域を回復させよう!
固定期間が終わると、筋力と共に柔軟性も低下します。
肩関節には通り、肩甲骨にも6通りの動きがあり、更に肩関節と肩甲骨は連動して動くので、これらの動きを一つずつチェックして可動訓練を行いましょう!
動画はこちらから ▼▼▼
予防のためのテーピング方法
少しずつ日常生活やスポーツに復帰していくときに、テーピングやサポーターを利用することで、予防していくことができます。
最終的には、何もつけずに過ごせるようにすることがゴールですが、最初は活動時には頻繁にサポートするようにして、痛みが少なくなり、不安がなくなってきたら、少しずつつける時間を減らしていきましょう。
脱臼予防のテーピング方法はこちらから ▼▼▼
まとめ
トレーニングと可動訓練、そして、外れやすい動きをしない、という3つの脱臼防止対策は、ある一定期間やったら終了、というわけではありません。
脱臼の不安がなくなってきても、ある程度の運動習慣を継続して予防していきましょう!