肘の骨折や手術後、数週間の固定期間を経て、いざ固定が外れると、**「以前のように腕が動かない」「曲がりづらい、伸びづらい」**と感じることが多いでしょう。
これは、肘が上腕骨、橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)の3つの骨から構成される複雑な関節であり、固定によって**「曲がりづらくなって、伸びづらく」**なっているためです。
このブログでは、YouTubeチャンネル「みやのまえチャンネル」で紹介された、固定解除後に自宅でできる肘の可動域訓練を中心に、効果的なリハビリ方法とその注意点をご紹介します。今日から実践できる方法を知り、少しずつ本来の動きを取り戻しましょう。

目次
なぜ肘は固まってしまうのか?リハビリが必要な理由
肘の関節は、二の腕の骨と、前腕にある**橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)**という3つの骨が複雑に組み合わさってできています。
骨折や手術で何週間も固定されていると、この複雑な関節の周りの組織が硬くこわばってしまい、関節が動きづらくなります。例えるなら、長期間使っていなかったドアの蝶番(ちょうつがい)が錆びて、ギシギシして開かなくなった状態です。
ギプスが取れたら、この「動きの幅(可動域)」を広げる訓練と、弱ってしまった筋肉を鍛える訓練(筋力トレーニング)がセットで必要になります。
肘を動かす「たった4つの動き」をマスターしよう!
肘の動きは複雑そうに見えますが、リハビリで意識するのは大きく分けて以下の4つだけです。
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動きの名称(日常表現)
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専門用語(参考)
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やりたい動作のイメージ
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目標の動き(目安)
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曲げる
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屈曲(くっきょく)
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肘を内側に曲げ、手を肩に近づける
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本来は自分の肩に触れるくらいまで曲がります
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伸ばす
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伸展(しんてん)
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肘をまっすぐ、ピンと張るように伸ばす
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反対側の手がどれくらい伸びるか(個人差あり)に合わせて近づけます
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手のひらを下(ひねる)
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回内(かいない)運動
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手のひらを地面に向かってひねる
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橈骨と尺骨がクロスする動きが含まれます
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手のひらを上(ひねる)
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回外(かいがい)運動
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手のひらを天井に向かってひねる
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上記「回内」の反対の動きです
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無理は絶対ダメ!安全にリハビリを進めるためのルール
「早く治したい!」という気持ちはわかりますが、焦りは禁物です。固定が外れた直後は、固定されていた場所だけでなく、その周りの組織も硬くなっています。
リハビリの大切な注意点
• ゆっくり段階的に行う: 急に激しいリハビリをやりすぎると、肘の周りにある大事な靭帯や、神経・血管を傷つけてしまう可能性があります。これは、急いで固まった蝶番を力ずくで開けようとして、ドアそのものを壊してしまうようなものです。
• 牽引(けんいん)も優しく: 関節の隙間を広げるように「引っ張る」訓練(牽引)を行う際も、強く引っ張りすぎないよう注意しましょう。
リハビリのゴールデンタイム
リハビリは、体が少しでも温かく、関節の組織が柔らかくなっている状態で行うのが一番効果的です。
最適なタイミングは、ズバリ「お風呂上がり」**です!
温かい状態で行って関節を動かした後、必要に応じて冷やすのが一般的な流れです。
自宅で実践!「少し痛いかな」で止める訓練のコツ
1. 曲げる(屈曲)訓練
肘を曲げていきますが、最初は肩まで(手術した肘と同じ側の肩)手が届かないことが多いです。
曲げてみて、「少しだけ痛いかな」というところまで来たら、そこからさらに少しだけ深く曲げます。
これを何度も繰り返し行うことで、少しずつ関節の動きがスムーズになっていきます。
2. 伸ばす(伸展)訓練
同様に、肘をまっすぐ伸ばします。
これも「少し痛いかな?」という程度で留めながら、ゆっくり伸ばす動作を繰り返します。
特にお子様がリハビリをする場合、自分では怖くて強く動かせないことが多いので、大人がそばで補助してあげることが大切です。
3. ひねる(回内・回外)訓練
手のひらを上や下に向けてひねる動きも、曲げ伸ばしと同じように、「ちょっと痛いかな」という範囲で優しく動かし続けます。
4.引っ張る動き(牽引)
仰向けに横になってバンザイをしてもらって、そのままどなたかが水平に引っ張ってあげると腕が牽引されて肘の関節が開き、肘関節の周りの組織を緩めることができます。
仰向けで腕を普通におろした状態で、上腕と前腕を掴んで引っ張っても良いです。
5. 遊び感覚でリハビリ!ボールを使った万能訓練
上記の4つの動き(曲げ、伸ばし、ひねり)を全部ひっくるめて、総合的に動かすのに最高なのが、ボールを使った訓練です。
これは、リハビリというより、もう遊びや体操感覚でできてしまいます。
100均などで売っているゴムボールのなどを使ってキャッチボールするのがおすすめです。
ボールを投げる動きは、肩と肘の複合運動で、更に肘関節の屈曲と伸展、回内・回外など肘の複合的な関節運動にもなるので、非常に良いリハビリになります。
ボールを投げる時のコツは、肘を先に投げる方向に出しその後手首を使って投げる【肘→手首】の順番で投げると肘関節の動きが大きくなりリハビリ効果がアップします。
少しずつ、投げる強さや距離、回数などを調節して段階的に強度を増やしていきましょう。
まとめ
リハビリは、硬くなった関節を滑らかにする作業です。
固定が外れた当初は、曲げ伸ばしが思ったようにできなくてああせりを感じてしまうこともありますが、硬く錆び付いた蝶番に油を差し、少しずつ動かして可動範囲を広げていくように、焦らず段階的に取り組むことが回復への近道となります。
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